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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その12】

 ブラッドマンと三人の勇者が去った洞窟の中に雨音が満たされる。
 ほんの少し離れているだけの隣の洞窟の音が雨の音にかき消されて聞こえてこないほどだ。
 チーコとトウマは二人で夕飯の食材を取り出し、コンロの火を灯り代わりにして食材を切っている。
 カッツは洞窟の入り口で腕組みをしたまま目を瞑っている。仮眠でも取っているのだろうか。
 イレーヌ女史は手帳に何かを書き記している。
 レツと勇者がいればいつもどおりの光景なのだが、そんな中で俺は末っ子の勇者の助けを求めるような眼差しが頭から離れなかった。
 勇者と従者の関係には何人も介入を許されない、それは勇者の従者同士にも同様の事がいえる。
 そんなことはわかっている。
 わかってはいるが、嫌な胸騒ぎがどうにも収まらないのだ。
 勇者の過剰な怯えよう、そしてブラッドマンという男の人となりを見ていればただの反省会ではないことは明らかだ。
 見に行って何かができるわけではないが、とにかく様子だけでも見ておかなければ……俺はそう思って腰を上げた。
「あれ?そろそろ夕飯の時間だぜ?」
「隣の洞窟の様子を見てくる。遅くなるようだったら、先に食べていてもらっていい」
「りょーかい。じゃあ、向こうの勇者達に伝えてきてくんない?」
「ん?」
「お前らの分もあるから食べに来いってさ。あ、ブラッドマンの分はないから」
水で戻したジャガイモを切りながらトウマがイタズラをした直後の子供のように笑った。
 どうやら勇者達を気にかけていたのは俺だけではなかったようだ。
 少し心強くなった俺は意を決して洞窟の入り口へ向かった。
 外は相変わらず霧雨がひどいが、隣の洞窟までは崖の壁を伝っていけば迷うこともない。
 俺が洞窟の外に足を踏み出した時、さっきまで俯いて目を瞑っていたカッツがゆっくりと目を開けた。
「従者が勇者をどう扱おうが従者の自由。誰も介入できないのはわかってるんスね?」
「……わかってるさ」
「じゃあ、何で行くんスか?」
「勇者は勇者である前に一人の人間だ。ブラッドマンにやっていい事と悪いことがあるのを教えに行くだけだ」
「もしわかってもらえなかったら?」
「……殴ってでもわからせる」
俺がそう答えると、カッツは軽く溜息をついて立ち上がった。
 どうやら俺についていくつもりらしい。
「あの人相手じゃ、カイルさんが返り討ちにあうだけスよ」
「わ、悪かったな」
「こういうのを要らぬお節介って言うんスよ」
相変わらずの憎まれ口を叩くと、壁伝いに霧の中へを消えていく。
 カッツが協力を申し出てくれるのは正直以外だった。同じ勇者として何か思うところがあるのだろうか。
 俺もカッツの後を追って霧の中へを足を踏み入れた。
 外に出ると、生暖かい空気と水滴が俺の顔を覆った。視界は完全に閉ざされ、一歩先が見えないほどだ。
 雨の音も予想以上に大きく、カッツの足音すら聞こえてこない。
 確かにこんな中で闇雲に動いても身動きが取れなくなるのが関の山だ。
 そんな悪条件の中でも、崖伝いに歩いたおかげでほとんど迷うことなく俺はブラッドマン達がいる洞窟にたどり着くことができた。
 ついたときには鎧も顔も霧でビショビショに濡れていた。
 洞窟の中からはビシン、ビシンと何かがぶつかって弾ける様な音が聞こえてくる。
 一体何をしているのか、そう思って中に入った瞬間俺はその光景に思わず絶句した。
「う、うぐぅ……」
「くぁぁ……」
「ひぐ……」
俺の目の前で勇者達は下着一枚にされ、洞窟の壁に手をつけてブラッドマンに背中を見せていた。
 そんな勇者達をブラッドマンはベルトを改造した手製の鞭で何度も、何度も滅多打ちにしていた。
 三人の勇者には無数の蚯蚓腫れが走り、皮が引きちぎれ赤い肉が露になるほどの傷も数多くあった。
 背中からは滝のように血が流れ、三人の下着と足を真っ赤に染め上げている。
 ブラッドマンは全身汗だくで肩で息をしながらも、一心不乱に鞭を振るい続けていた。
「オラ、反省しろ!!今度こそ反省しろぉぉぉぉ!!」
「うぎゃあ!!」
その度に勇者達が悲鳴をあげ、皮が弾けとんだ。
 隣では先に洞窟に入っていたカッツが険しい表情でブラッドマンを睨みつけていた。
「ブラッドマンさん、アンタ、何してんだ!!」
俺の声でやっと俺達に気がついたのか、ブラッドマンは鞭を振るうのやめ、虚ろな目で俺達を見た。
 その目の奥に渦巻く狂気のようなものに、俺は気圧されそうになった。
「何って、調教に決まってんじゃねーかよ。今回も任務を失敗したクソ勇者によ」
「調教って……勇者と言えど相手は子供だぞ!?限度ってものがあるだろう!?」
「コイツらはコレぐらいやっておかないと、身に染みねぇんですよ」
そう言うと、ブラッドマンはダメ押しと言わんばかりに鞭を振り下ろした。
「ひぎぃ!!」
青い髪の勇者がくぐもった声を上げる。
「クソ、コイツらがもう少しマシだったら今頃は……」
ブラッドマンはブツブツと何かを言うと、鞭代わりに使っていたベルトを腰に巻きつけた。
 鞭の音が止み、洞窟の中に雨の音と勇者の喘ぐ様な呼吸の音だけがやけに響いた。
「さて……と、そろそろお楽しみの時間だ」
ブラッドマンはそう言うと、比較的傷の浅い末っ子の勇者の肩に手をかけた。
 肩を触れられた末っ子の勇者は身体をガタガタ震わせながら、まるで許しを請うような眼差しでブラッドマンを見上げ、必死に顔を左右に振っている。
 お願いです、それだけは勘弁してください……その顔はそう語っていた。
「ダメだ」
ブラッドマンは勇者の必死の願いを退けると、例の針を腰の袋から取り出す。
 そして何の躊躇もなくその背中にそれを……挿した。
「お願いです……弟じゃなくて、俺が代わりに……」
「ダメだ。さっさと裸になって壁に手ぇつけろ」
赤い髪の勇者の申し入れを冷たくあしらうと、ブラッドマンが非情な命令を下す。
 針を刺された末っ子の勇者はその命令に抗うことができず、ゆっくりと下着の裾を握る。
 その様子を二人の兄は壁に手をついたまま悲痛な面持ちで見ている。
 二人の顔には弟を救うことができない悔しさと諦めが入り混じっている。
 その異常な光景を前にして、俺は腹のそこから沸々と沸いてくる真っ赤な感情を抑えきれなくなっていた。
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