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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その13】

「う……ひぐっ!!」
末っ子の勇者は泣きながら、針の力にしたがって下着を一気に脱いだ。
 俺達からは彼の背中しか見えないが、その顔が耳まで真っ赤に染まっているのが見て取れた。
 彼くらいの年頃の少年は他人に裸を見られるのを嫌がる。ましてや陰部を他人に晒すなんて論外だろう。
 今、彼が味わっている羞恥は計り知れないものだということは明らかだった。
 下手をすれば一生のトラウマになりかねない。
 その身体は少年のものとは思えない、とても逞しくてしなやかな体つきだった。
 戦うために絞り上げられた、まさに勇者にのみ与えられる体だった。
 そんな身体に無数に残る鞭の後、痣、そしてタバコを押し付けたかのような火傷の跡。
 俺はそれが何を意味するかがわかっていた。
「これでは虐待だ……」
末っ子の勇者は嗚咽を漏らしながら壁に両手を着き、両足を肩の幅に広げた。
 ブラッドマンはヒュウと口笛を鳴らすと、腰のベルトを外し、末っ子の勇者の前に立った。
「ブラッドマン、貴様、もしや……!?」
「ああ、その『もしや』だ」
ブラッドマンは興奮気味に答えると、ズボンを下ろし、末っ子の少年の腰に手を当てた。
「人っ子一人いねぇこういう森ん中とか、しなびたババァの娼婦しかいねぇ田舎とかじゃ便利だぜ?下手な女より『締まり』がいいしな」
ブラッドマンが一歩前に出ると、末っ子の少年が小さな肩を竦めた。
 己の性欲を満たすため、そして恐らくは力関係をこの3兄弟に示すための行為も兼ねているのだろう。
 それにしてもなんて下卑た行為を……。
「やめろ!!これは児童に対する性的虐待だ!!重罪だぞ!!」
「ならねぇよ」
俺の制止の言葉をブラッドマンは真っ二つに斬って捨てた。
「その法律は、相手が『ただの子供なら』適応されるんだろう?残念ながら、こいつは人間じゃねぇ、『勇者様』なんだよ」
「な!?」
「従者はな、勇者を魔物と戦わせれば、あとはどう勇者を扱ってもいいんだぜ。頭のいい騎士様ならそれくら知っているだろう?」
「ぐ……」
悔しいがブラッドマンの言う事が正しかった。
 教団から与えられた勇者に関する書類には、勇者をいかに効率よく運用するかという内容が事細かに記載されていた。
 それに対して勇者の平常時に関する扱いはただこう書かれていたに過ぎなかった。
 『通常時の勇者の管理に関しては従者及び武器の管理人に一任する』
 つまり、逃がしたり死なせなければ何をしてもいいということなのだ。
 レツのように死んだ弟の代わりに扱っても、ブラッドマンのように虐待の限りを尽くしても問題はない。
 勇者にどんな仕打ちをしても罪に問われる事はないのだ。
 ブラッドマンという男はそこまで承知してやっているのだ。
「それとも、騎士様の勇者を貸していただけるんですかい?」
調子付いたブラッドマンは俺を挑発するように後ろにいたカッツを指差した。
 今まで無表情で俺達のやり取りを眺めていたカッツが微かに動揺した。
 いや、表に見せなかっただけで同じ勇者が受けている仕打ちに少なからず動揺していただけかもしれない。
「お、俺が……!?」
「騎士様が代わりにその勇者を貸してくださるんなら、今日のところはクソ勇者様を解放してもいいんですがねぇ……」
男は流し目でカッツをチラッと見ると、俺に視線を戻した。
 こいつ、この期に及んで何をいってやがるんだ……!!
 カッツと3兄弟の勇者を交換するだと?人を馬鹿にするにも程がある条件だ。
 こっちが飲めるはずのない条件を出して諦めさせる魂胆なのだろう。
 どこまでも腐った奴だ。
 教団は何を思ってこんな輩を従者に選任したのだ。
 力があればそれでいいというわけではないだろうに。
「ひぐっ、ぐすっ……」
不安げに事の成り行きを見守る兄二人と、弟のすすり泣く声、そして額に汗を浮かべたまま俺の次の一言を待っているカッツ。
 それらが焦りを生み、俺から正常な判断力を容赦なく奪っていく。
「他所の従者の楽しみを奪うんだから、そっちの勇者様を貸してくれなきゃ割が合わんのですよ」
ブラッドマンは調子付いて、品定めでもするようにカッツの顎に手を当てる。
 次の瞬間、カッツの拳がブラッドマンの顎を粉砕する瞬間が目に浮かんだが、予想に反してカッツは大人しくブラッドマンの手を許していた。
 勇者は従者を傷つけてはならない、カッツはその約束を頑なに守っているのだ。
 顔を背け、手から逃れようとしてもブラッドマンは執拗に手を伸ばす。
 カッツの表情に怯えに似た焦りのようなものが浮き出ているのをはじめて見た。
「待て、そ、それは無理だ!!」
「あれはダメ、これもダメ。騎士様、アンタ交渉下手ですねぇ。それとも騎士道精神で、騎士様が勇者達の代わりに犠牲になりますかい?」
「お、俺が!?」
「俺はスッキリできりゃそれでいいんで」
「俺は、俺は……」
俺は言葉に窮してしまった。
 奴の口車に乗せられて、引くに引けない状況に陥ってしまっていた。
 俺が犠牲になって勇者達を守る事ができるのなら……そんな考えが頭に浮かぶ。
「な、なら俺が……」
「勇者の為にてめぇのケツを差し出すか。お優しいねぇ、騎士様は」
ブラッドマンはカッツから手を放すと、俺のあごを掴んだ。
「だったらさっさと鎧を脱いで、あのガキみたいに壁に手ぇつけろ」
「ちゃ、ちゃんと勇者達を解放しろよ!!や、約束だからな!!」
喉が引きつって声が震える。
 とんでもないことを言ってしまった、その実感が後からやってきて体が震えた。
 結局俺は何も知らない世間知らずの坊ちゃんだった。
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