鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その15】

 小一時間マントに包まっていたと思う。
 どうにか気分が落ち着いた俺は再び鎧を身にまとってトウマ達のいる隣の洞窟へ向かった。
 洞窟を出たあたりから、チキンスープのいい匂いが漂ってくる。
 そういえば雷の国を出国する直前に朝食を取ったのが最後で、それっきりまともな食事を取っていないのを思い出し、腹がグゥとなった。
 こんな状況でも空腹だけは覚えるのだから、人間の身体とは不思議なものだ。
 簾代わりの枯れ草を手で掻き分けてトウマ達のいる洞窟に入ると、既に食事が始まっていた。
 チキンスープに、小型のパン二つ、それに干し肉を水で戻して香草焼きにしたものに、ハーブのサラダまでついていた。
 そういえば洞窟を探す最中、トウマとイレーヌ女史が野草のようなものを摘み取っていた。
 恐らくそれをサラダにしたのだろう。
 携帯食料と現地調達した食料で作ったにしては恐ろしく豪勢なメニューだ。
 これもチーコとトウマ、イレーヌ女史あってのものだ。
 町の食堂でも中々お目にかかれない手の込んだメニューをブラッドマン除く皆が焚き火を囲んで食していた。
 三つ子の勇者達も上半身を包帯とガーゼでガッチリと包まれた状態で食事を取っていた。
 怪我の割には三人とも元気で、三人で寄り添うように食事を取っていた。
 恐らくはチーコが月猫秘伝の傷薬を使って、イレーヌ女史が治癒の魔法を使ったのだろう。
 そんな中でブラッドマンだけが一人背を向けて不機嫌そうに食事を取っていた。
 チーコに半ば無理やりに勇者を差し押さえられ、気に入らないのだろう。
 当のチーコは勝ち誇ったように自分だけ別メニューの猫まんまを頬張っていたが。
「カイル君、遅かったのね」
イレーヌ女史が俺に気づき、スープ皿を取り出してチキンスープを注いでくれる。
 中には鶏肉以外にもジャガイモやサラダに使っていた野草まで入っていて、想像以上にボリュームがある。
 それに香草焼きとパン、それにボウルに盛られたサラダを大皿に載せる。
 疲れた身体には嬉しいメニューだ。
 俺が焚き火に近づいてそれを受け取ろうとすると、別の手が大皿を持ち上げ俺の目の前に差し出してくれた。
 その手とは、末っ子の緑色の髪の勇者だった。
 少し前までヒステリックに泣き叫んでいた彼とは同一人物とは思えない、ニコニコとした笑顔を見せてくれていた。
「さっきは助けてくれてありがと」
「え?」
「痛いの助けてくれてありがと」
そう言って皿を差し出され、俺は戸惑いながらも受け取った。
「傷……大丈夫か?」
「おお!!」
末っ子の勇者は元気よく拳を突き上げた。
 どうやら傷の方は本当に問題がなさそうだ。
「最初、治癒の魔法があまり効かなくてね……チーコちゃんの持ってた塗り薬で湿布薬を作ってそれと合わせてやっと出血が止まったのよ」
「そうなのか?」
「ええ。原因は定かじゃないけど、どうやら勇者には魔法が効きにくいようね」
イレーヌ女史の報告を聞きながら、俺は緑色の髪の勇者の隣に腰を下ろした。
 兄二人も末っ子に比べると元気が無いが、それでもさっきまでと比べると格段に血色が良くなっていた。
 二人は俺が腰を下ろしたのと同時に、自分の皿に残っていたパンを掌に載せて俺の前に差し出した。
 これは……お礼のつもりなのか?
「これ……」
「弟の身代わりになってくれたお礼……」
二人の勇者はそう言うと、俺の皿の上にパンを載せた。
 小石のような大きさのパンだが、食べ盛りのこの子達にとっては少しでも食べたいはずだ。
 それに……ブラッドマンのような男がまともに食事を与えているとは到底考えにくい。
 そう考えると、このパンはこの子達にとってとても貴重な食料のはずだ。
 俺は勇者達が俺にくれたぶんと自分の分のパンを合わせて、それぞれに2つずつのパンを勇者達の皿に戻してやった。
 貰った勇者達は訳がわからないようで、2個に増えて戻ってきたパンを眺めてキョトンとしている。
 一人だけあげないのも可哀相なので、俺は自分のパンの最後の一個を末っ子の勇者の皿の上に転がしてやった。
「あ……」
「あのっ」
「これっ!?」
食べてもいいの?と三人が俺に目で問いかける。
 ありがとう!!とでも言って、すぐに口の中に放り込むと予想していた俺にとって、与えられたパンを前にして戸惑っている3人がひどく不憫に思えてならなかった。
 恐らくは他人からこのように何かを与えられた経験がないのだろう。
「ちゃんと礼が言えた褒美だ。お前達で食べていいぞ」
俺が許可した瞬間、三人の目が一斉に輝いた。
「いいの!?」
「本当に!?」
「いいのかー?」
俺が与えたのは小石のように硬い、文字通りの携帯食のパンだ。
 お世辞にも美味いと言えたものではない。
 だが、そんな物でも三人の勇者は嬉しそうに頬張っている。
 その光景を見ていると、俺は胸を締め付けるような思いになるのだった。
 そんな気持ちを悟られぬように、俺は残った香草焼きとサラダを口の中に掻き込んだ。
「そういえばさ……」
自分の食事を終えて、食器を片付け始めたトウマが不意に俺に話を振ってきた。
「三人は名前は何ていうんだ?」
「な?」
「ま?」
「え?」
トウマの質問に、三人の勇者は首をかしげた。
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