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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その17】

 こういう場合、どんな名前がいいのだろうか。
 三つ子なのだから、それなりに共通点のある名前がいいのだろうか。
 それ以前に一人の名前すら満足に浮かんでこないのに、関連性のある三人の名前なんて浮かぶはずも無い。
 これは困った……。
「姓名判断の本、いるかニャ?」
チーコがリュックの中からハードカバーの本を取り出して、こっちに差し出してくる。
「……いや、遠慮しておく」
なんでそんなものを持っているんだとか、このメンツのどこにそんな需要があると判断したんだと言いたい事は多々あったが、とりあえず俺はそれを固辞した。
 確かに名前をつける助けにはなるだろう。
 しかし3人には出来合いの名前ではなく、ちゃんと考えた名前をつけてやりたいのだ。
 その場で思いついた適当な名前を一生名乗らされるようなことは絶対させたくない……自分のように。
 チーコは、ニャーと残念そうな声を上げながら本をリュックの中にしまった。
 どうせあの本も売りつける魂胆だったんだろう。
「本当に俺なんかで……いいのか?」
俺がそう尋ねると、三人の勇者は一斉に大きく頷いた。
 ここまで期待されると、逆にこっちも腹を括らざるを得ないと言う覚悟がでてくる。
「リク、カイ、クウ……」
「え?」
「よし。お前達の名前だ」
俺はそう言うと、一番上の勇者の頭に手を載せた。
「お前はリク」
次に青い髪の次男坊に手を乗せる。
「お前はカイ」
そして最後に末っ子の緑色の髪に手を触れる。
「お前はクウ、だ」
名づけられた三人は訳もわからずキョトンとして俺の顔を見ている。
 もう少し気の聞いた名前にしてやりたかったが、大した物も無いこの洞窟の中で、この時間で考え付く精一杯の名前だった。
 あとは三人がこの名前を気に入ってくれるといいのだが。
「リク……」
「カイ……」
「クウ……」
しばしの間、互いに向き合って名前を呼び合う三人。
 お互いを名前で呼び合うことにまだしっくり来ていないらしい。
 だが、何度も呼び合ってくるうちに実感が湧いてきたらしく、次第に三人の目に光が宿っていくのがわかった。
「俺がリク!!」
「オレがカイ!!」
「おれがクウ!!」
互いに確認しあうように名前を呼び合う三人。
 名前を得た事で、アイデンティティというものを僅かではあるが実感し始めているのだろうか。
 タイガを見ている限りは、それが勇者にとっていい意味で変化をもたらしてくれるはずなのだが。
「どうだ、その名前気に入ってくれたか?」
「うん!!」
三人が同じタイミングで答える。
 嫌な顔をされたらどうしようかと内心ハラハラしていたが、予想以上に気に入ってもらえてよかった。
 俺は心の中でほっと胸を撫で下ろした。
 嫌な顔をされたらどうしようかと内心ハラハラしていたのだが、杞憂に終わったようだ。
「おし、それじゃあ改めて……よろしくな、リク、カイ、クウ!!」
「おう!!」
「こっちこそ」
「よろしくなー!!」
トウマと勇者三人がいきなり挨拶を始める。
 そういえばまだ正式に自己紹介もしていなかったのを今になって思い出した。
「じゃあ、次は俺だな。俺はカイル・クレイトー。よろしく頼む、リク、カイ、クウ」
「こっちこそよろしく、だぜ!!」
「よろしくだぜ!!」
「だぜー!!」
お互いに名乗りあって、俺は三人と手をガッチリ握り合った。
 やはり勇者と言えど同じ人間であることにはかわりは無いのだ、俺は自分の中の考えが間違っていないことを改めて確信した。
 三人はその後もイレーヌ女史やトウマ、チーコと自己紹介をしていた。
 快く自己紹介を始めるイレーヌ女史やトウマに、渋々三人に付き合うチーコ。
 さっきまで沈んだ空気だった洞窟の中に、明るい笑い声が戻ってくる。
 ブラッドマンの舌打ちをしながら酒をあおるが、その音も皆の笑い声の中にかき消されていた。
 そんな様子をカッツは表情を変えることなく見つめ続けていた。
 自分でつけた名前を、しかも居酒屋にあった酒のボトルから適当な名前を名乗ったカッツは今どんな思いでいるのだろうか。
 本人の言うとおり、何も感じてはいないのだろうか。
 それとも……。
 無機質のように揺らぎの無い瞳から、そのどちらなのかを読み取る術は俺には無かった。
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