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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その2【トラシアでの戦い】 □

俺は世界を……【トラシアでの戦い・その8】

「オルフェウス……だと?」
オレンジ色の魔物は少女の口にした名を反芻し、眉をひそめた。
 レツから見て、イエスともノーとも取れるリアクションだった。
「汝その名を知るや否や」
彼女はそういうと、漆黒のランスをグリフィスに向けた。
 返答次第では……といいたげな仕草である。
 少女とグリフィスの間に緊迫した空気が漂った。
「知っていたとして、そう簡単に答えると思うのかね?」
「……だろうな。残念だ。グライドルという奴と比べて利口そうに見えたがな」
彼女の挑発の言葉に、グリフィスの表情が一瞬にして怒りに満ちるのをレツは見逃さなかった。
「やはり……貴様がイレギュラーか!!」
グリフィスは殺意に満ちた言葉を口にすると、その巨大な翼を全開にする。
 その表情はレツ達を相手した時とは対照的に、殺意と怒りに満ちた表情だった。
 上級の魔物が一人の少女に見せる表情ではない。
 だが、彼女が普通の少女ではないのは明白だった。
 一瞬で100匹近いガーゴイルを粉砕したのだ。
「ならば、喋る気になるまで相手をしようか……口と胴体さえあれば喋ることはできるからな」
「ほざけ!!」
一蹴りで宙に舞い上がったグリフィスが、上空から少女に襲い掛かる。
 彼に追随するように、異変に気づき集まってきたガーゴイル達も彼に続く。
 普通の戦士なら腰を抜かし死を覚悟する状況である。
 だが少女は悠然と立ちはだかり、余裕の笑みすら漏らしていた。
 見ているレツでさえ、タイガを抱く手に自然と力が入る状況だった。
「道化が……」
少女が吐き捨てるようにグリフィスに嘲りの言葉を浴びせる。
 次の瞬間、少女のスピアの突きと、コウモリの怪物が翼から放った青い衝撃波によってガーゴイルたちが一斉に裁断されていた。
 まさに一瞬の出来事だった。
 黒い布きれのように地面に舞い落ちていくガーゴイルたち。
 少女は重さを感じさせない軽やかさでランスを振り回し、残りのガーゴイルを蹴散らしていく。
 コウモリの怪物も彼女の死角になる位置にいるガーゴイルを撃墜する。
「貴様、勇者の護衛か!!」
「その考えが道化だというのだ!!」
グリフィスの拳を軽々とランスで弾き飛ばす少女。続けてコウモリが衝撃波でグリフィスを攻撃する。
 グリフィスはコウモリの衝撃波の連携攻撃を辛うじて回避すると、空中で間合いを取る。
 グリフィスを守るように、残ったガーゴイルが肉の盾を形成する。
「グルル!!」
少女の呼びかけに答えるように、コウモリは耳に障る声で鳴く。
 そして彼女の背中に止まったかと思うと、まるで彼女の翼になるように一体化してしまった。
 漆黒の翼を得て、空中を舞う少女。
 ランスの一撃がガーゴイルの肉壁に大きな風穴を開ける。
 周囲にいたガーゴイルもランスから放たれた衝撃波によって粉砕される。
 ほんの数十秒ほどで、残った魔物はグリフィス一匹であった。
 レツが戦いに目を奪われていると、何者かがタイガの腹部に手を当てる。
 手の主の方を向くと、それはミカエルだった。
「ミカエル?」
「この間に勇者の手当てをする」
「あ、ああ」
「案ずる必要はない。この勝負……決着は付いている」 
ミカエルはそういうと、まぶたを閉じ精神集中を始めた。
「命の根源たるマナよ、我が手に集いて癒しの光を。ヒールライト!!」
ミカエルが呪文を唱え終えると、彼の掌から暖かな光がタイガの腹部に照射される。
 グリフィスの攻撃によって赤黒く充血していたタイガの腹部が、癒しの光によって幾分か肌の色を取り戻す。
 それと同時に、硬く閉じられたタイガの瞼が微かに開いた。
「ごめん……俺……負けた……」
血だらけのタイガの口が小さく上下し、微かな言葉を紡ぎだす。
 レツはミカエルの代わりにタイガの身体に手を当て、自らの気を手の先に集中した。
 本来は自分の傷の直りを早くする技術なのだが、それを応用して掌から自分の気を放つことで傷の直りを加速させることができる。
 癒しの魔法には程遠いが、今のレツにできることといったらその程度しかなかった。
 そして、少女とグリフィスの戦いの行方を見届けること。
 レツは自分の不甲斐なさを鈍いながら、タイガの身体を強く抱き寄せる。
 レツは空を仰ぐと、少女と魔物の戦いを食入るように見始めた。
「ぐおおおおおお!!」
グリフィスが悲鳴を上げる。
 少女の手にしたランスがグリフィスの右腕を貫き、そのまま引きちぎる。
 反射で左手で反撃するが、コウモリの翼がそれを阻み逆に深い傷を負った。
「馬鹿な……13魔将の俺が……人間の小娘一人に……!?」
グリフィスは左手で右手の出血を抑えながら、怯えた口調で呟く。
「子供しか相手にできぬ貴様にとっては屈辱か?」 
少女はそう言いながらタイガを一瞬見下ろすと、蔑みの目でグリフィスを見た。
 人間に、それも年端も行かぬ少女にバカにされたグリフィスの顔に、怒りの表情があらわになる。
 それとは対照的に、少女は尚もグリフィスを馬鹿にしたような態度を崩さない。
 まるで彼を怒らせるかのように。
「ふざ……けるなあああああああ!!」
グリフィスが翼を羽ばたかせ、少女に突撃する。
 待っていたかのように迎え撃つ少女。
 一瞬の激突だった。
 少女は翼でグリフィスの爪を弾くと、ランスで左手、両足、翼を一瞬で切断していた。
 手足とともに、達磨になったグリフィスが地面に落ち、そして仰向けに転がった。
 タイガを軽々と退け、ミカエルと二人がかりでも追い払うのがやったとだった相手の無残な姿。
「マジかよ……」
レツの口から思わず言葉が漏れた。
 そんなレツの耳に、断末魔に似た悲鳴が飛び込んできた。
 レツは思わずタイガの目を手で覆った。
 そこにいたのは少女とコウモリの怪物、そして少女のランスに右胸を貫かれ、地面でもがくグリフィスの姿だった。
 いくら敵とはいえむごすぎる仕打ちだった。
 圧倒的という言葉がレツの脳裏をよぎる。
「再度問う」
グリフィスを見下ろし、少女が再び尋ねる。
「オルフェウスという名前に心当たりはあるか?」
彼女の質問に必死に首を横に振って否定するグリフィス。
 少女は深いため息を突くと、漆黒のスピアを抜いた。
 グリフィスは命乞いをするかのように、彼女にすがり付こうと首をもたげる。
 悪党の最期とはいえ、あまりに情けないものだった。
「知らぬか……仕方あるまい」
彼女は背後にいたコウモリと分離すると、天高く跳躍した。
 跳躍した少女をコウモリの怪物が翼で包み込む。彼女の足元には漆黒のランスが輝く。
 その姿は、すぼめた蝙蝠傘のようであった。
「終わりだ」
彼女の言葉と共に、その蝙蝠傘はスピアと少女を軸にして高速回転を始めた。
 少女とコウモリの姿が溶け合い、漆黒の円錐に変化していく。
「やめてくれ、やめてくれええええええ!!」
グリフィスの悲鳴が響く中、その円錐は高速でグリフィスに襲い掛かった。
 成す術もなく直撃を受けるグリフィス。
 巨大なドリルと化した漆黒の円錐はグリフィスの腹部を食い破り、その高速回転で身体をねじ切っていく。
 ほんの数秒で、グリフィスの身体は粉々に砕かれ、赤い肉片が周囲に飛び散った。
 グリフィスの粉砕を確認したのか、黒い円錐は回転を止め、コウモリと少女とランスに分離する。
「これも違うか……」
抑揚のない口調で少女が独り言を呟く。
 そしてレツ達を一瞥すると、コウモリの怪物を背負い、まるで自分の翼のように羽ばたくと少女の身体がフワリと浮く。
 そのまま彼女はコウモリと共に漆黒の空へと消えていった。
 その様子をレツは呆然と見送るしかなかった。
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