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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その22】

 俺は『洞窟の中でおきたこと』をありのままに話した。
 訓練の第二段として、リク達三人とカッツが実戦形式の模擬訓練をさせていたこと。
 その最中に三人が偶然一箇所に固まり、ほぼ同時に弓を放った事。
 そして次の瞬間、三人のものとは思えない強烈な光が弓から放たれ岩壁を粉々に粉砕した事。
 イレーヌ女史やブラッドマンは眉唾といった様子で俺の話を聞いていたが、それが事実である以上他に答えようが無かったのだ。
「だってさぁ、リク達の弓の攻撃って通常の弓に毛が生えた位の威力しかなかっただろ?それがそんな……」
「いや、紛れも無い事実ス」
疑いを隠せないトウマに対して、そう言い切ったのはカッツだった。
 落ち着きを取り戻したのか、カッツはいつもの起伏のない表情で立ち上がるとズボンについた砂埃を手で払った。
「後一瞬反応が遅れてたら、俺もそこの岩と同じになってました。冗談抜きでカイルさんにやらせなくてよかったス」
カッツの言っている事は紛れもない事実だった。
 たとえ盾でガードをしたとしても、防ぎきる自信は俺には無かった。
 悔しいとかいう以前に、あんなものを見せ付けられては納得せざるを得なかった。
「こいつらの弓は豆鉄砲なんかじゃない。……とんでもない大砲だ」
俺の言葉に皆がゴクリと唾を飲んだ。
 今までこの力が発見されなかったのは、ブラッドマンが三人の勇者を一人づつ戦わせていたからだろう。
 リク、カイ、クウの三兄弟は三人がコンビネーションを駆使して戦って初めて真価を発揮するタイプの勇者なのだ。
 偶然とはいえ、俺は三人の秘めたる力を解放することに成功したのだろう。
「い、いまの」
「俺たちが」
「やったのか?」
どうやら今の状況を一番把握できていないのはリク達三人であった。
 弓を構えたままの姿勢で硬直し、ぽっかりと穴の空いた洞窟の壁面をただボンヤリと眺めていた。
 恐らく自分達がやったという自覚がないのだろう。
 これはいい意味で大きな誤算だった。
 俺の中に三兄弟のコンビネーションでユダを翻弄しようという思惑があった。
 だが、付け焼刃の戦略である以上、それはあくまでもフェイントの域を出ないだろうと考えていた。
 しかし、あんなものを見せ付けられては話は別だ。
 3人にこんな切り札が隠されていることはユダが知るはずもないし、予想すらしていないはずだ。
 先ほどの戦いでユダもイレーヌ女史やチーコについては脅威だと認識したはずだ。
 奴もそのあたりは対応策を練ってくることは間違いない。つまり、次に奴と戦う時は同じ戦略は通用しないといっていいだろう。
 だが逆に考えれば戦力外と認識されているであろうリク達は何もしなければ、完全にノーマークだと思っていい。
 そこにさっきの攻撃を打ち込められれば……。
「すごいじゃないか!!俺でもカッツでもない、お前たち三人がやったんだよ!!」
俺が興奮気味に話すと、三人はやっとお互いに顔を見合わせて状況を飲み込み始めた。
 そんな状況が数秒たったところで、三人の目が一斉に輝きだした。
 やっと自分達の置かれた状況が腹に落ちたのだろう。
「すげー!!」
「俺たち」
「こんなことやったんだ!!」
リク達は包帯が外れかけているのも忘れて、お互いに抱き合って狂ったように喜び、跳ね回った。
 初めてであった時、ユダにただただ突撃を繰り返して死霊に捕まっていた頃に比べれば考えられないほどに三人とも進歩した。
 さっき起きた現象の条件を検証して、意図的にアレを発射できるようにすれば……。
 これはもしかしたら大化けするかもしれない、そんな予感が俺の中で確実に大きくなっていた。
「ししょー!!」
「俺達!!」
「やったぜー!!」
「だから俺は師匠じゃ……うわぁ!?」
三人の矛先は今度はカッツに向いた。
 リク達は一斉にカッツに駆けて行くと、一斉に抱きついた。
 カッツは突然のことで思考が停止したらしく、三人をぶら下げたまま石像のように固まってしまっていた。
 他人と触れ合った経験の少ないカッツには少々刺激が強かったようだ。
「ほら、カッツが固まっちゃったから離れてやれ。ガーゼと包帯を交換したら、さっきの攻撃の再現をするぞ」
「はい!!」
「はい!!」
「はい!!」
三人は元気よく返事すると、背中に怪我を負っていることなど嘘じゃないかと思わせるくらいに勢いよく向こう側へと駆けて行った。
 やれやれといった様子でチーコ、イレーヌ女史、トウマも続いて洞窟の方へ戻っていく。
「すげぇじゃねぇか。あのクソどもをここまでにするとはよ。一体どんな魔法使ったんだ?」
興奮気味にブラッドマンが俺に声をかけてくる。
 少し前まで三人のことを足手まとい以外に捉えていなかったいなかったくせに、なんて都合のいい男なのだろうか。
 一緒にいて不愉快さだけが残る男だ。
「魔法なんかじゃない」
ブラッドマンの問いかけに俺ははっきりと答えた。
「貴方が本来すべきことを俺が代わりにやったまでだ」
俺はそう答えると、ブラッドマンの顔が引きつった。
 そんな奴を無視して、俺は未だにショックから立ち直れないカッツを引きずって洞窟の方へと歩いていった。
 後ろからブラッドマンの怒鳴り声と何かを蹴飛ばす音が聞こえたが、俺は気に留めなかった。
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