鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その2【トラシアでの戦い】 □

俺は世界を……【トラシアでの戦い・その7】

 再びタイガの姿が消える。
 次の攻撃も神速に近い。だが、最初に比べて明らかにスピードが落ちていた。
 少なくともレツが容易に目で追っていられるスピードなのだ。
 そのせいか、グリフィスもさっきのように直撃を受けることなく、攻撃をいなす余裕が生まれてしまっていた。
 まずい、レツは心の中で叫んだ。
「余興にもならぬ」
グリフィスはそうため息をつきながら言葉を漏らし、タイガの蹴りを翼で弾き飛した。
 タイガはまるで人形のように吹き飛ばされたが、空中で受身を取り、再びグリフィスに襲い掛かる。
 頭上からのクローでの攻撃。
 だが、グリフィスはその攻撃を手のひらで軽々と受け止めた。
 クローが手にこいこみ血が滴るが、ほとんど皮膚の表層で止められていた。
「!!」
タイガが危機を察して間合いを取ろうとする。
 だがそのときにはグリフィスの手がタイガの右手を掴んでいた。 
「タイガ!!」
レツが思わず叫ぶ。
 タイガも必死に抵抗するが、グリフィスはそのままタイガを吊り上げるように持ち上げた。
 3m近い巨体に腕をつかまれ、吊るされては成す術がなかった。
 タイガの抵抗が弱くなるにつれ、彼を包んでいた光も小さくなっていく。
「よくがんばったと褒めておこうか」
グリフィスがタイガに声をかける。
 だがタイガは何の反応も示さず、ぐったりとしたままグリフィスに吊るされていた。
 グリフィスは勝ち誇ったようにタイガを見下ろす。
 そしてその小さな身体の腹部に強烈なボディーブローを打ち込んだ。
 血と胃液の混じった液体を口から噴出しながら、風に吹かれた暖簾のように宙に舞い上がるタイガ。
 だが、右手を掴まれているその身体は成す術もなくグリフィスの前に引き戻される。
 そんなことを、グリフィスはタイガを弄ぶように何度も繰り返した。
「やめろぉ!!」
タイガを救うべく、レツが駆け出す。
 だが、その脇をさらに早い何かが駆け抜けていった。ミカエルである。
 レツは足の早さには自信があったのだが、ミカエルの速さはその比ではなかった。
 一瞬その速さに気を取られたが、すぐに彼の後に続いた。
 ミカエルはグリフィスの懐に入ると、紅蓮の剣を一瞬で抜刀しタイガの腕を掴んでいる腕に対して振り上げた。
「何!?」
今まで余裕の表情を崩さなかったグリフィスに一瞬焦りの表情をみせる。
 そしてタイガを手放し、バックステップをする。
 その姿は明らかにミカエルの視線に気圧されていた。
 レツはそんな状況にかまうことなく、タイガを地面スレスレでキャッチする。
 本当はそのままグリフィスを半殺しにしたかったが、タイガの身を案じて後ろに下がる。
 レツの腕に抱かれたタイガの姿は実に痛々しかった。
 吐血と、返り血と、傷口からの出血でドロドロになった上半身。
 意識はなく、辛うじて息があるがあるかないかの弱弱しいものだった。
「させるか!!」
グリフィスが叫びながらレツに襲い掛かる。
 だが、ミカエルの斬撃がそれを阻む。
グリフィスは憎憎しげにミカエルを睨み付けながら、2、3歩後退した。
 ミカエルもグリフィスを牽制しながらジリジリと後ろに下がる。
「勇者は無事か?」
レツのいる位置まで下がったミカエルが声をかける。
 だが、タイガの状況を見た途端、舌打ちをしグリフィスに向き合った。
「こうなったら、二人でこの状況を切り抜けるしかない」
ミカエルの声に従い、レツはタイガを背負って立ち上がった。
 悔しいがこの状況では勝ち目は薄い。
 何とかしてこの場を切り抜けて、勇者を医者のいる場所に連れて行かないと。
 だが、すでにグリフィスの頭上には街を襲撃していた配下の魔物が100匹近く旋回している。
「悪いが、私は獲物を逃がすほど寛大ではないのでね」
グリフィスが穏やかに、そして殺気をこめて語りかける。
 まさに絶体絶命だった。二人で逃げるのでさえ絶望的なのに、ましてや瀕死のタイガまでいる。
 背後にも敵の気配を感じる。
 すでに逃げ場はなかった。
「やれ」
非情にもグリフィスが号令を下す。
 次の瞬間、無数のガーゴイルが一斉にレツたちに襲い掛かった。
 空がガーゴイルで埋め尽くされていく。
 もはやこれまでか……レツは覚悟を決めて構えをとる。
 せめてタイガだけでも……。
「みつけたぞ」
戦いに水をさすかのように、突如天にこだまする少女の声。
 次の瞬間、突風が空を吹き荒れたかと思うと、100匹近くいたガーゴイル達が一瞬で粉々に裁断されていた。
 悲鳴も上げることなく、ヒラヒラと風に吹かれながらガーゴイルの骸が地面に落ちてくる。
 その様子はさながら黒い布きれのようだった。
「ついに現れたか……」
ミカエルが小さく呟いたのがレツの耳に入ってきた。
 ミカエルの視線の先にレツも向くと、そこには一人の金髪の少女が一匹の巨大な蝙蝠を従えて立っているのが目に入った。
 その髪は後ろで束ねられ、ウェスタンスタイルの服を身にまとっている。
 そして、手には漆黒のランスが握られている。
「貴様に問う」
その少女はグリフィスを指差し言った。
「オルフェウスという名に心当たりはあるか?」
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