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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その29】

 俺の心中の焦りをあざ笑うかのように、ゾンビ達は雨後の筍のように次々と茂みから姿を現す。
 土葬された死体なのか、半分体中から蛆をバラ撒きながらこちらに這いずってくる者もいれば、まだ息があるかのような生々しい者まで、一様に俺とトウマに向かって来る。
 トウマはさっき投げ損ねた手裏剣を再び構え、ジリジリと後ろに下がり始めた。
 相手は未知数の死者の軍団、方やこっちはたった二人。まともに戦えば死ににいくようなものだ。
「クソ、このままじゃカッツを見失うっていうのに!!」
「大丈夫、奴は俺達から逃げられない」
「え?」
「マーキングならしてるってことだよ。最初に仕掛けた煙玉、周囲のマナに反応して信号を発する鉱物が混ぜてあるんだ。だから、あとはここを突破できれば信号を追ってカッツを追える」
トウマ、あの僅かな瞬間でそこまで先を読んで行動していたのか……。
 俺なんか、ブラッドマンに騙され、挙句カッツすら守ってやれなかったというのに……。
 今は悔やむ状況なんかではないと頭では理解していても、俺の頭の中で自分を罵倒する声が反響するように響く。
 だからお前は無能なんだ。頭でっかちの嫌われ者。誰も守れない、だから誰からも好かれないんだよ。
 そんな声と同時に頭を叩き割られるような激痛が走り、俺は吐き気すら覚えていた。
「問題は、どうやってここを突破するか……だっ!!」
トウマは一番近くにいたゾンビの顔面めがけて手裏剣を投げつけた。
 卍型の刃物は浅い放物線を描いて初老の男の顔面に深々と突き刺さった。普通ならこの時点で痛みと出血で地面を転げまわってもおかしくのないのだが。
「げっ、やっぱり全然効いてない!!」
トウマが小さな悲鳴を上げる。
 初老の男は顔面に食い込んだ手裏剣を抜こうともせず、何かを求めるように両手を突き出してこちらに迫ってくる。
 出血もなく、ダメージらしいダメージを受けている様子はない。
 トウマの一撃は急所を突いた的確な一撃であり、通常の相手なら十分通用する攻撃であったろう。
 問題は相手が斬っても平然と動ける、痛覚や出血のないゾンビだという事だ。
「相手はアンデッドだ!!生半可な攻撃じゃ意味がない!!」
「つまり、炸薬符付きの苦無でも厳しいってことっすか……!!」
トウマはそう言って、ポケットから札のような物を柄に巻きつけてある苦無を取り出すと、さっきのゾンビに向かって投げつけた。
 ゾンビはその一撃を避けようとすらせず、苦無はその胸に易々と突き刺さった。
 次の瞬間苦無に巻かれた札が爆発し、ゾンビの上半身を爆炎が包んだ。
 爆音と共に肉片が森の木々に飛び散った。
「やったか!?」
爆発で起こった黒い煙が風に流れ、ゾンビの体が現れる。
 爆発の直撃を受けて、ゾンビの胸から上は砕け散ったように喪失していた。
 胸から上を失ってバランスを取るのが難しいのか、身体を大げさに前後に揺らしながらもこっちに進んでくる。
 あの爆発を受けてもまだ行動が可能とは……奴らは本当に不死身なのか!?
「んなろぉ!!」
自棄気味に札を巻きつけた苦無を3本同時に投げつけるトウマ。
 一本は肩から上の無いゾンビの腹部に、残りの二本は腰の辺りに突き刺さり、三本同時に爆散した。
 初撃に比べて激しい爆発と黒い煙がゾンビの身体を飲み込む。
 煙が引いた時そこに死体の姿は無く、その名残を思わせるような手足や肉片が周囲に散乱しているだけだった。
 胴体らしき肉の塊が必死にもがいていたが、すでに我々の元に近づく事はできないでいるようだった。
「一匹粉々にするのに炸薬付きので4本……手裏剣じゃ足止めにもならない……これじゃ二、三匹始末する間に武器が無くなっちまうぞ!!」
トウマが弱音を吐きながら、苦無を構えた。
 爆薬付きの攻撃でこの有様なのだから、ミスリル製とはいえ俺の剣での攻撃は更に効果が薄いだろう。
「我が前に立ちふさがりし愚者に光華の裁きを!!フォトンスフィア!!」
背後からイレーヌ女史の詠唱が聞こえ、突如現れた光の球体がゾンビの中の一体を飲み込んだ。
 その球体は一瞬輝いたかと思うと眩い光を放って破裂した。
 光が引いた時、そこにあったのは人の姿をした灰の像だった。灰の像は己の重さに耐えられなくなったのか、流れ出すように地面に崩れ落ちた。
 それと同時にイレーヌ女史とチーコが俺達の前に滑り込んできた。
「二人とも怪我は無い!?」
「大丈夫だです。それよりも……カッツが……」
「カッツ君がどうしたの?」
「ユダの奴に……攫われた」
俺の一言に、イレーヌ女史は少なからず驚きの表情を見せた。
 だが地面に横たわったブラッドマンの骸と、引きちぎられたベルトを見て即座に状況を把握したようだった。
「あの針を……奪われたのね」
「……詳しい事情は後で話します」
俺はそれだけ答えると、アンデッドの大群に剣を向けた。
 カッツを救い出し、ユダを拘束する。言い訳をするのは全てを無事済ませてからでいい。
 少し遅れてリク達も駆けつけてくる。そして案の定、ブラッドマンの変わり果てた姿を目にして硬直していた。
「ブラッドマンさん……」
「死ん……でる……」
「なん……で……?」
三人の眼差しはその場に居合わせた俺に答えを求めていた。
 ひどい扱いだったとはいえ、一応は彼らの従者だったのだ。動揺するなという方が無理なのだ。
 俺は対応に躊躇した。リク達にもブラッドマンが倒れている理由を説明せねばならない
 しかし、それには彼らがブラッドマンから捨てられそうになっていた事を告げねばならない。
 そんなことを平然と告げられるほど、俺は冷たい心根の持ち主ではなかった。
「それは……」
「チーコ、リュックの苦無と札の類全部くれ!!出し惜しみしてる余裕は無いからな!!」
言葉に窮していた俺を救ったのはトウマの声だった。
 振り向くと、ゾンビ達がかなり近くまで接近しているではないか。
 敵の接近を目にしたリク達も武器を構えて、敵の襲撃に備える。
 とりあえずブラッドマンから注意を逸らす事はできたが、それが一時しのぎでしかない事は俺も承知していた。
「札はともかく、苦無は大事に使うニャ。アレは入荷に時間がかかるニャ」
「わかってるよ。苦無一本に札を何枚も巻き付けて使うから!!」
チーコはリュックサックに頭を突っ込むと、20本ほどを縄で束ねてある苦無や、札を束ねたような物を次から次と放り投げていく。
 トウマはそれをかき集めると、ジャケットを脱いでたすき掛けにそれらを肩にかけた。
「確かに死体の中に死霊を押し込めてやれば、魔法のコントロールから逃れる事はできるけど……。これだけの数、一体どこから?」
杖を構えながら、次々と現れるゾンビの群れを見回しながらそう呟いた。
 確かに墓荒らしをしたにしては、その数が多かったし、損傷の殆ど無い遺体も数多くいる。
 そして、ユダの言っていた難民キャンプという言葉。まさか……俺の中で嫌な予感が過った。
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