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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その30】

「漆黒の空を照らす紅玉よ、その無限なる光、崇高なる意思の元に我が敵を討て、ティンクルスタービット!!」
イレーヌ女史の呪文詠唱が完了し、彼女の周囲に光が集まり、妖精の様な小さな塊となった。
「いって!!」
彼女が指差すと同時に光の弾は一斉にゾンビ達の下へと飛んでいく。
 光の弾はゾンビたちを取り囲むと、光の矢を放ちその身体を貫く。流石に一撃では倒す事はできないようだったが、即座に別の弾が次々と光線を放ち、ゾンビ達の体を灰にしていく。
 まるで意思があるかのように光の弾はゾンビ達の周囲を飛び交い、眼前の敵を次々と本来に姿へと戻していく。
「カイルの旦那!!これ持ってて!!」
突然トウマが掌の大きさほどのレンズを俺に投げて寄こした。
 俺がそれを覗き込むとそこには包囲を示す矢印があり、小さな光のような点が数秒ごとに点滅していた。
「それがさっき言ってたマーキングだぜ。その光がカッツの反応だ。この光を追っていけば追いかけることができる」
「この光の先にカッツがいるのか?」
「ああ。煙に混ぜ込んでいる鉱石は水浴びした程度じゃ落とせないから、しばらくは反応が消える事はないはず」
トウマは苦無に札を巻きつけながら、そう説明した。
「……それと、さっきはバカイルだなんて言ってごめん」
「お前は正しいことを言っただけだ。気にしていない。カッツを助けるまでは、俺はバカイルのままだ」
「じゃあ、さっさとカッツを助けてカイルの旦那に昇格しようぜ、バカイルさん!!」
札を巻きつけ終えたトウマがその苦無を手近なゾンビに向かって投げつける。
 苦無はゾンビの上半身に突き刺さり、白い煙と共にその上半身を薄氷で覆いつくした。
 そのゾンビを光の弾が素早く打ち抜いて砕く。
 上半身を失ったゾンビはこちらのことがわからないのか、フラフラと彷徨い、最後は石に躓いて転んでしまった。
 ジタバタと両足を動かして立ち上がろうともがいてはいるが、上半身が無くては立ち上がることも叶わないようだった。
「ニャーニャニャー、ゴーロゴロニャー、ニャンニャンニャンニャニャニャ、ナオナオナオナー、ダイヤモンドダストニャ!!」
チーコの魔法が発動し、凄まじい冷気と共に、銀色の破片が舞い上がりゾンビ達を氷の牢獄へと押し込む。
 身動きの取れなくなったゾンビは光の弾やトウマの苦無が確実に粉砕していく。
 連携の取れた攻撃だったが、我々が殲滅する数より森から現れる数の方が多いこの状況では焼け石に水だった。
 生きている敵とは違い、文字通り粉々になるまで攻撃をせねばならないのがそれに拍車をかけていた。
 奴らは手首だけになっても我々に迫ってくるのだ。
「クソッ!!」
俺は昆虫のように指だけで移動してくる手首を突き刺して、真っ二つにした。
「このままでは数に押しつぶされる!!」
「そうね……ここは強行突破をかけるべきでしょう」
「どのみちカッツを追わなきゃならないからな……身動きが取れなくなる前に動くべきか」
「わかったわ。チーちゃん、水筒を貸してもらえるかしら?」
イレーヌ女史が尋ねると、チーコは踊りながらニャ、と答えると腰にぶら下げていた水筒をイレーヌに手渡す。
 彼女は水筒を目の高さに掲げると、軽く印をきって目を閉じた。
「破邪の魂よ、我が眼前にある命の源に宿り、汝が生み出せし子を守りたまえ、ホーリーウォーター」
イレーヌ女史は呪文を唱え終えると、水筒の水を俺に手渡した。
 見た所、何の変哲も無い水筒なのだが。
「中の水を剣に振り掛けて。それで剣に光の力が宿るわ」
彼女に言われるまま、俺は水筒の蓋を開け、自分の剣に振りかけた。
 彼女の言うとおり水筒の中の水は薄っすらと白い光を放っていた。その水に触れた俺の剣にも白い輝きが移っていた。
 この術を騎士の養成学校の講義で一度だけ見たことがあった。水を媒体にして光の力を武具に宿らせる高度な術法だ。
 その時はその術が使える司祭を教団の支部からわざわざ招待してやったのだが。
 実戦でこの魔法を使用されたのは初めてで、俺はガラにもなく興奮を隠せないでいた。
「よし、これなら!!」
俺は白い光の宿った剣で眼前まで迫っていた敵を切り裂いた。
 まるで布を裂くかのようにゾンビの身体は切り裂かれ、ジュッという音と共に剣で切り裂いた箇所が灰になる。
 その灰になった箇所が更に別の箇所を灰にし、最終的には体の半分近くを灰にしていた。
 これならゾンビ相手でも遅れを取る事はなさそうだ。
「魔法の効果が切れたら、水筒の水をかけなおせば効果が復活するわ」
「了解した!!」
俺は答えると同時に、そのまま二匹目を切り倒した。
 二匹目も断末魔と共にその身体を灰にして地面に崩れ落ちていった。
 確かに聖なる水を使った攻撃は不浄な者に対して非常に強力だ。だが、これでは突破口を開く一撃にはなりえなかった。
 強行突破をかけるのなら瞬間的火力を以って電撃戦を仕掛け、進路上の敵を一掃せねばならない。俺の剣にそこまでの火力は無い。
 この場合、それに最も適任なのは彼らしかいなかった。
 だが……。
「ブラッドマンさん……」
「死んじゃった……」
「これからどうすればいいの……?」
肝心の三人は従者の骸を前にして、絶望と困惑に打ちひしがれていた。
 あんな非道な扱いを受けていたとはいえ、今まで指示を受けていた相手がいなくなったのだから戸惑うのも無理は無い。
 だが、今はそんなことを言っていられる状況ではなかった。
「リク、カイ、クウ!!お前達の力を貸してくれ!!」
「え?」
「借りるって」
「どういうこと?」
三人の目に、少し前まで宿りかけていた自信の光は無かった。
 従者を失うという未知の事態にただただ怯え、何かをする気力を失ってしまっていた。
 武器の管理人もいない今、彼らに指示を下す存在がいなくなってしまったのだ。
 そういえば、カッツもあの時同じ気持ちだったのだろうか。
 ふとそんな考えが頭に浮かんだ。遺跡での戦いでカッツは目の前で従者のグレンギリーを失った。管理人のラフロイズもショックで放心状態。
 今になって思うに、カッツの精神状態はあのときボロボロだったに違いない。
 知らなかったとはいえ、あの時俺はカッツのそんな心のうちを知ろうともせず、彼の憮然とした態度に腹を立てているだけだった。
 自分の無神経さに今更ながら腹が立った。
「三人ともしっかりしろ!!お前達の師匠が大変な事になっている!!助けに行くためにもお前達の力が必要なんだ!!」
「で、でも……」
「俺達ブラッドマンさんの命令がないと……」
「何もしちゃいけないって……」
「今は自分の頭で考えろ!!お前達の力は何のために在る?お前達は今何をすべき……いや、何をしたいんだ?」
自分の伝えたい事が言葉になっていないことは承知していた。
 だが、今は適切な言葉を悠長に選んでいられるほどの余裕は無いのだ。
 この間にもカッツはユダによっていずこかに連れ攫われてしまっているのだから。
「俺はカッツを助けたい。その為にお前達に協力して欲しい。もしお前達にカッツを助けたいという気持ちがあるのなら自分の意思で俺に力を貸してくれ!!」
「俺達は……」
「師匠を」
「助けたい!!」
三人の瞳に輝きが戻る。
 三人はお互いに顔を見合わせると大きく頷き、同じ方向に弓を番えた。
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