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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その32】

 トウマが爆弾を仕掛け終えてからしばらくの間、俺達はユダの後を追って森の中を駆け抜けた。
 途中何度かゾンビたちとの小競り合いがあったが、幸い数も少なく正面から力技でそれらを打ち砕いて突き進んだ。
 我々の背後から再度爆音が響いた後は、ゾンビ達は姿を現さなくなった。
 俺の予測どおり、奴らはトウマの仕掛けた爆弾の音に誘導されて我々から遠ざかっているのだろう。
 大した妨害もなく我々はユダとの距離を詰めていった。
 正確に言うと、レンズに映し出された点がある地点で静止して動かなくなったのだ。
 我々を足止めするためにカッツだけ置き去りにして自分だけ逃げ出したのか、それとも我々の追跡に気が付いたユダが適当な場所で篭城を決め込んだのか……。
 前者は少し現実味がない仮説だった。奴が危険を犯してまで手に入れたカッツをそう簡単に手放すとも考えにくい。
 それにトウマの仕掛けた追跡用の粉に気が付いた可能性も低い。
 恐らくは我々を始末するために自分が有利な場所で待ち伏せをしていると考えていいだろう。
 そんな俺の仮説を裏付けるように、森が途切れて視界が広がり、眼下に広大なキャンプが目に飛び込んできた。
 規模からして数千人が住んでいるだろう。
 俺達はそんなキャンプを見渡せる崖の上にいた。幸いにもゾンビ達は周囲にいなかった。
「ユダの野郎、あのキャンプの中に紛れやがったな!!これじゃセンサーが効いてても意味がないぜ!!」
トウマが隣でぼやくが、俺はそう思ってはいなかった。
 奴の言っていた『今日のゲストは元近所の難民キャンプの皆さんでぇーす!!』という言葉が今になって引っかかっていたのだ。
 俺達がさっき戦っていたゾンビ達は、墓から掘り起こしたような損傷の酷い遺体から、少し前まで生きていたかのような遺体まであった。
 つまり、奴が死んですぐの死体を使役していたか、あるいは……奴が魂の入物を作るために誰かの命を奪ったかだ。
「トウマ、双眼鏡あるか?」
「あいよ」
トウマはそう答えると、折りたたみ式の双眼鏡をズボンのポケットから取り出すと、俺に手渡してくれた。
 足元ではチーコが自前の双眼鏡でキャンプを見回している。
 俺はトウマから双眼鏡を受け取ると、難民キャンプの中の様子を伺った。
 予想が正しければ難民のキャンプはすでに……。
 双眼鏡を通して俺は眼下の風景をくまなく見回した。俺の予想がただの杞憂だと信じて。
 人でごった返した難民キャンプの中をユダを探し回るという展開を心から願っていた。
 だが、残酷にも俺が目にした光景は予想通りだった。身の毛がよだつ地獄絵図が目の前に広がっていたのだ。
「カイルのダンナ?」
「間違いない。ユダの奴、とんでもない事をやりやがった!!」
「え?」
「ユダの奴、難民キャンプの住人を殺して死霊を入れていたんだよ!!」
俺の怒気のこもった言葉に、トウマは半ば反射的に双眼鏡を奪い取ると自らもキャンプの中を除いた。
 すぐに俺と同じ光景を見たのか、突然腰を抜かし、ガタガタと震えながらキャンプを指差した。
「な、なんだよこれ!?ってことは、キャンプの人、全員ゾンビになっちゃってるんじゃないのか!?」
その言葉と様子から、トウマが俺と同じ光景を見たのだと実感した。
 俺が双眼鏡から見た風景……それはキャンプの住人達が何をするわけでもなく彷徨い歩く様だった。
 難民キャンプの住民といえど、生活がある。水を汲み、衣服を洗い、食事を作り、人によっては商売を営み……。全員何かしらの『生活』を営んでいるはずなのだ。
 だが、俺が見た住人は例外なくただボンヤリと立ち尽くし、たまにふらふらと歩き回っているだけなのだ。
 この動きは俺達が見たゾンビの動きとそっくりだった。
「恐らくな。あのキャンプ全体がゾンビの巣窟になっているといっていいはずだ」
「私も見せてもらっていいかしら?」
「どうぞ。……あまり見てて気分のいい物ではないですよ」
俺はそう忠告して彼女に双眼鏡を手渡す。
 俺の口調にイレーヌ女史はおっかなびっくりした様子で双眼鏡でキャンプの中を覗く。
 だが、そんな彼女の態度はすぐに驚きと絶望に変わってしまっていた。
「死霊に死体という器を与えれば、死霊を乗っ取り返されるという事態は回避できるわ。でも、こんな……ここまで人は残酷になれるものなの!?」
俺から双眼鏡を受け取り、中の様子を見たイレーヌ女史がそう言って呆然としていた。
「まさか、俺達が死霊を封じたから、その対策に……」
「ちがうよ」
「ユダがここの人たちを殺したのは」
「もっと前の話だよ」
トウマの言葉を遮ったのはリク達だった。
 何か事情を知っているらしく、さほど驚いた様子も見せずにキャンプを見下ろしていた。
「ブラッドマンが言ってた。ユダがキャンプの人を皆殺しにしたって」
「その話を聞いて、俺達ここにやってきたんだ」
「だから、トウマ達のせいじゃないよー」
ブラッドマンの奴、やはり俺達に肝心な情報を伏せていたのか……。死者を冒涜したくはないが、死ぬ前に四、五発殴っておけばよかったと思う。
 ともかく、リク達の言葉を参考にすると、ユダは以前殺したキャンプの住人の死体を利用したという事なのだろう。
 俺達がユダを追い詰めたせいで凶行に走ったのならどうしようかと思ったが、そうでない点だけは救いだった。
 まあ、それでもキャンプ全体がゾンビに埋め尽くされているのは揺ぎ無い事実なのだが。
「……あれは!?」
尚もキャンプ内の様子を見ていたイレーヌ女史が突然声を上げた。
「まだ生存者がいるわ!!南東の区画に、1人……2人、ゾンビに追われているわ!!」
「なんだって!?」
俺はイレーヌ女史から双眼鏡を受け取ると、彼女が指差す地点を見た。
 彼女の言うとおり、少年らしき人影が二人ゾンビに追われて逃げ回っているのが見えた。
 二人ともゾンビを追い払いながら逃げてはいるのだが、次から次に集まってくるゾンビ達に追い詰められているのが俺にも容易に見て取れた。
 このままではゾンビの餌食になるのも時間の問題だろう。
 それに、二人組……もしかしたら、もしかする可能性もある。
「トウマ、カッツは動く気配はあるか?」
「いんや。動く気配はないぜ」
「よし。それじゃあ、まずは生存者二人を救出する。その後、カッツの反応がある地点に向かうぞ」
「あのー」
「なんだ、怖気づいたのか?」
「いや、俺達も相当ヤバいんですが」
「え?」
双眼鏡を外すと、崖の下からゾンビ達がこちらに向かって這い上がっているのがわかった。
 それも1人や2人じゃない、数十人単位でだ。森の中かからも続々とゾンビが現れてくる。
「クソ、こいつらいつの間に!?」
俺が水筒の水を剣にかけると、俺の剣の刀身が仄かに白い光を放った。 
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