FC2ブログ

鎌使いの文章倉庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その33】

俺は盾と剣を構え、ゾンビ達の来襲に備えた。
 俺達の背後ではイレーヌ女史とチーコが魔法の準備を行っている。トウマも戦意を失わず、札の巻かれた苦無の束を手に取る。
 リク達も武器の形態を弓に変え、弦を引き絞って狙いを定める。
『いやぁ、ゾンビが聴覚で動いてるって見抜かれるとはなぁ。予想外だったぜ』
俺達に最も近いゾンビが口を開き、そう声を発した。
 そう喋ったわけではない。何故ならゾンビ達は口を開いているだけで、一回も閉じることなく声を発しているからだ。
 まるでゾンビの声帯を発生器代わりに使っているかのような……。
 蛙が踏み潰される瞬間のような潰れた声だったが、その甘ったるく、いやらしい口調には聞き覚えがあった。
『ヨウコソ、オレサマの城へ。チミタチの来訪を勇者共々歓迎するぜ』
「ユダ、貴様か!!」
『せいか~い、それでは正解者の騎士様にゾンビのプレゼントでぇーす』
ユダはふざけた口調で答える。
 その商品だと言わんばかりに、さっきまで声を発していたゾンビが突然立ち上がり崖を駆け上がってくる。
 反射的に俺は剣を構え、光を帯びた剣でそのゾンビを横一文字に切り払った。
 剣が触れた部分から光が溢れ、不浄な命は一瞬で灰へと姿を変えた。
『おうおうスンゴイねぇ。破邪の魔法かぁ?』
「そんなことはどうでもいい!!カッツはどうした!!」
『カッツ?お前、自分の勇者に名前付けてたのかよ?酔狂だねぇ』
「酔狂?お前だってユダという名前を誰かから与えられたんじゃないのか?」
『ちげーよ。この名前はオレサマがオレサマに付けた、オレサマ専用のクールな名前な訳』
「自分で自分に名前をつけたのか?」
『うるせぇよ。俺は勇者では終わらねぇ。俺は自分の力で全てを手に入れる。てめぇの名前も、自由もだ!!』
最後の言葉はひたすらふざけていた今までと違い、強い語気に包まれていた。
 どうやら、知らず知らずのうちに奴を刺激することを口走っていたらしい。そんな挑発をするような言葉を使った覚えは無いのだが……。
 一体俺が口にした言葉の何処に奴の気に障ったというのだろうか。
「カイルにーちゃん!!」
「奴の言葉を」
「聞いちゃダメだ!!」
突然、リク達三兄弟が俺とゾンビの間に割って入り、光の矢を一斉に放った。
 三人の光の矢はゾンビの頭を正確に貫き、頭は眩い光を放ちながら粉々に砕け散った。
 だが、それだけではゾンビの動きを止める事はできなかった。頭部を失いながらも、リク達ににじり寄ってくる。
「う、うわああ」
「あ、頭がないのに……」
「く、来るなぁ!!」
「ビビるくらいニャら、前に出るニャ!!」
たじろぐリク達を押しのけて、チーコとイレーヌ女史が前に出る。
 その杖とピコピコハンマーはマナの反応で激しく輝き、大規模な魔法が発動可能だとすぐにわかった。
「南天の空に舞う光華の十字よ、我が言葉に応え地を這う汚れた魂に浄化の鉄槌を下せ。今こそ集え、星光の裁きとなりて!!サザンクロス!!」
「ニャーニャニャー、ゴーロゴロニャー、ニャンニャンニャンニャニャニャ、ナオナオナオナー、ダイヤモンドダストニャ!!」
イレーヌ女史とチーコの魔法がほぼ同時に炸裂する。
 俺達の上空に光が一点に集まり閃光の十字架が出来上がる。それが地面に激突すると同時に、地面が一瞬で凍結し、まるでダイヤが舞うように氷の粉が中に舞う。
 崖を這い上がる途中で無防備の死者達はその二重攻撃に、一瞬にして灰燼と化した。
 だが最初のゾンビを排除してもなお絶えることなく死者達が崖を這いずりあがってくる。
 イレーヌ女史とチーコが第二射の準備を始めるが、一体何回魔法を叩き込めばいいか見当もつかない状況だ。
 なにせ、目の前に広がるキャンプにいた全員が自分達の敵なのだから。
『ひぇー、おっかねー。一瞬で30匹は消し飛んだな。でも、後何回魔法を叩き込めばいいのかな?ヒャハハハハハ!!』
新たに現れたゾンビが口を開き、憎たらしい言葉を吐く。
 厄介な事に、今度現れたゾンビ達は人間だけではなかった。
 人間のゾンビの中に、犬や牛、そして魔物の姿までもが確認されたのだ。
 その中の犬のゾンビが崖を駆け上がり、俺の喉もとめがけて跳びかかってきた。
 想像以上のスピードに一瞬面食らったが、辛うじてギリギリのところで盾を構えその一撃を弾いた。
 肉と金属がぶつかり合う音と同時に犬が大きく吹っ飛び、地面に転がる。
 動物虐待は好きじゃないが、俺は容赦なく犬の腹部に剣をつきたてた。
 次の瞬間、白い光が犬の全身を包み、その穢れた身体は白い灰に変わっていた。
『死霊の入物が足りなくてさぁ、近くにいた魔物や動物も利用させてもらいましたー。ヒャハハハハハ!!』
「まずいわね……。動きが緩慢になっているとはいえ、動きの鋭敏さは人間の比ではないわ。一筋縄でいく相手じゃないわよ」
イレーヌ女史の言うとおりだった。
 牙や爪を持つ動物や魔物のアンデッドは一発の攻撃力が高く、人間のそれよりはるかに脅威だ。
 しかも相手は痛みを知らないアンデッド。通常の魔物より厄介かもしれない。
 そんなことを考えているうちに、狼の死体の群れが目玉をぶら下げながら俺達に向かって飛び掛ってきた。
 狼達は崖を上るゾンビ達の背中を跳んで渡って来た。
「今度こそ」
「俺達に」
「任せて!!」
再びリク達が前に出る。
 リクとカイは弓を構えると、狼に向かって狙いを定めた。狼達はリク達に向かって一目散に向かっていく。
 そして奴らが自分達に向かって飛び掛った瞬間、リクとカイは弦から指を離した!!
 光の矢がビュンと音を立てて弓から離れ、狼の頭を貫く。
 ギャヒン!!という泣き声と共に頭を打ちぬかれた狼が坂を転げ落ちる。
 そこにクウが三日月状のブーメランを投げつける。
 坂を転げ落ち、身動きの取れない狼の腹をクウのブーメランが地面ごと容赦なく切り裂く。
 身体を真っ二つにされた狼はジタバタともがくだけで、もはやその場から動く事は無かった。
「よくやった!!お前達はそのままチーコとイレーヌさんを援護してくれ!!」
「任されたぜ!!」
「命にかけても」
「ここは死守するぜー」
三人から頼もしい返事が返ってきた。
 リク達の攻撃は一発一発の威力に劣るが、リーチと使いまわしに優れる。当てれば確実に倒せる獣のゾンビには相性がいいはずだ。
 とりあえず、戦況を五分に持ち込むことができれば今後の作戦を考える時間が作れる。
 だが、そんな俺をあざ笑うかのように突然空が騒がしくなった。
 まるで鳥が騒いでいるかのような……まさか!!俺は反射的に空を見上げた。
「おい、あれ見ろ!!」
俺が気が付いた時には既にトウマが空を見上げて、何かを指差して叫んでいた。
 見るとカラスのような黒い鳥がこっちに向かって飛来してくるのが見えた。
「おい……これってアリなのか!?」
『アリなんじゃないかなぁ?だって鳥も動物みたいなもんだしぃ?ヒャハハハハハハハ!!』
首だけになったゾンビからユダの憎たらしい声が聞こえてくる。
 まさに最悪の事態だった。
 崖下からは途切れる事の無いゾンビの群れ、そして上空からは鳥のゾンビ。
 手が届きそうな距離にユダとカッツがいるキャンプがいるというのに……上下からの挟撃を前にして俺は焦る気持ちを抑えて盾を構える事しかできなかった。
スポンサーサイト


* 「小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】」目次へ戻る
*    *    *

Information


+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。